約 1,077,049 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1115.html
「まさかミス・ロングビルが犯人じゃったとはのう」 集まった人全員の『死ねば?つーかくたばれ』光線を浴びながらも、オールドオスマンは鷹揚に笑っていた。 聞けば、酒場で尻を触っても起こらなかったから雇ったという。 「まあ、何はともあれ、皆ご苦労じゃった」 「ミス・ヴァリエールの使い魔の罪は今後問わんことにしよう」 「ありがとうございます。オールドオスマン」 ブチャラティのみお礼を言う。大先生?鼻歌を歌ってるね… 「それに、ミス・ヴァリエールとミス・ツェルプストーの二人については『シュバリエ』の爵位申請を宮廷に出しておいた。 ミス・タバサはすでに『シュバリエ』の爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいた。」 ルイズとキュルケの顔が喜んだり驚いたりで忙しい。 「ありがとうございます!」 「タバサ!アンタ本当なの?」 「今日は『フリッグの舞踏会』じゃ。 『破壊の杖』ももどってきた事じゃし、予定通り行おう。重ねて言うが、皆ご苦労じゃった」 「ああ、使い魔君たちは残ってくれんかね?」 「私とミスタ・コルベールが話がある」 生徒達が出て行くのを確認したあと、オスマン氏は語り始めた。 「それでじゃ、ミスタ・ロハン」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ… 「ワシの生徒たちを『本』にするのはもうやめてもらおうかの?」 「げえッ!」 露伴は、戦場で呂布と遭遇した武将のような反応を示した。 「ああ、今後はワシとミスタ・コルベールが君を監視するからそのつもりで」 「監視にはミスタ・ブチャラティも協力してくれるとありがたい」 「了解した」 「わ、分かった。もう『本』にはしない」 退室しようとするロハンを呼び止める。 「まだじゃ。話は終わってないぞい?」 オスマン氏に不気味な笑顔が浮かぶ。 「君には、今後学院内で『悪さ』をするようならどんな目にあうかを体験してもらおう。モートソグニル?」 オールドオスマンは自分の使い魔であるドブネズミを呼んだ。 ドブネズミ? ドドドドドドドドドドドドドド・・・ 「承太郎さんに聞いたことがある…まさか、それは!」 耳に不自然な穴が開いたドブネズミが現れた。 その傍らに『対戦車砲』のようなものが見える。 「おや?この『能力』を知っているのか?奇遇じゃのう。 なに、心配いらんわい。うちの学院の人間はこの『針攻撃』の治療経験が豊富じゃからのう。 すぐ直るワイ。それに痛いのは最初だけじゃ…多分」 「ま、待て!僕はルイズの使い魔だ。そういうことはご主人の許可が要るんじゃないか?」 「必要ないわい。じゃって君、最初から『使い魔じゃない』じゃろう?」 「「な、なんだってー!!」」 ブチャラティとコルベールが声をそろえた。 「『使い魔』のルーンには『ある種の洗脳効果』があるといわれておる。 マンガ家の君は自分の記憶のリアリティが失われるのを恐れたんじゃろう」 「召喚された時点で、君は『自分に対してはルーンは刻めるし、ここの会話もできるようになるが契約は成立しない』とルイズ君を書き換えた…違うかね?」 「ば、ばれてましたぁ~?」 「さて、ミスタ・ロハン。はじめようか」 「何とか言ってくれブチャラティ!同郷のよしみだろう?」 「俺からは何も言うことはない…おとなしくこの制裁を受けるんだな… むしろこの程度の『お仕置き』でラッキーだと思うことだ」 ブチャラティが『ジッパー』で露伴を『確保』する。 ガチャリ 『アレ』の照準がセットされる。 「ちょっとカンベン…ヤッッダーバァー!!!!」 岸辺露伴 → 再起『可』能 ブチャラティ → 後でこっそり露伴に頼み、ルーンの『洗脳効果』のみ解除。 M72 → ブチャラティが解体。使用不能に。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1476.html
「そんなわけで制服はシエスタというメイドが受けとりに行ってくれている」 ブチャラティがルイズの部屋で、主人に報告をしていた。 彼女は不満そうだ。リスがどんぐりをほうばるように、両頬に空気を溜め込んでいる。 「あんたたちっていつもそう。勝手に自分たちで決めちゃって。私のことなんか全然考えていないんだわ」 部屋を移す時だってそう。いつもいつも事後報告。 ブチャラティはあせって弁明を始めていた。 さすがにあの店に一人ではいるのは抵抗があるんだよ。と。 そういえば、ブチャラティは服を注文するとき、店長の人に『パンティーあげちゃうッ!』 と、妙なナンパをされていたっけ。 ルイズは笑いをこらえながら彼を許そうと思ったが、次の言葉がそれを取り消した。 「それに君が幼いとはいえ、男女が一緒の部屋に寝泊りするのはまずい」 「幼いって失礼ね!私は十六歳よ!」 ブチャラティは驚愕した。アバ茶を勧められたジョルノの気持ちを理解したと思った。 「なんだと!俺はてっきり十二歳くらいかと…」 「まあ、あなたのような三十近いオジサマにはそのくらいの年齢にみえるのかしら?」 妖艶な笑いを浮かべながらしゃべり続けるルイズ。 目の輝きは獲物を狙う隼のそれであった。 「それにしても、ジョルノやトリッシュよりも一歳も年上だというのか」 「トリッシュってだ~れ? どう考えても女の人の名前よね?」 「別にいいだろう。いわなくても」 「いえ、言いなさい!メイジは使い魔のすべてを知る決まりなのよ!」 その決まりは私が今作ったけれど。 「それなら言っておこう。俺は二十歳だ」 「…え? あるェ~?」(・3・) そのとき、閉じているドアの向こうから大声がした。 「あなたがた、イチャイチャするのは結構ですけれど、私のノックの音ぐらい気づいてく ださらないのかしら?」 キュルケの声だ。 気まずい。非常に気まずい。ブチャラティは居心地の悪さを感じていた。 熱くもないのに冷や汗がたれる。 「それにしても、ダーリンが二十歳だとは私も思わなかったわ。ごめんなさい、もう少し年が離れていると思っていたわ」 十八歳と二十歳のカップルなんて素敵だと思わない? キュルケがシナをかけている。 「あんた何の用よ。人の使い魔に手を出すなんて話、聞いたこともないわ」 いきなり目の前で、知り合いの男にあからさまに言い寄っている女を見たら誰でも引くであろう。ルイズだってそうだ。 「あら、いいじゃないルイズ。ゲルマニアではこの程度は挨拶のうちよ。それにダーリンみたいに素敵な使い魔を召喚した話なんてのも聞いたことがないわね」 「ここにはいない……」 第三者の声がキュルケの後ろで発せられる。タバサであった。 「キュルケ。本題」 わかったわよ。キュルケはふざけた笑顔を改めてブチャラティたちに向き直った。 「あなた達に質問があるの」 「ダーリンとミスタ・露伴、『スタンド』でしたか? なにやら特殊な能力をお持ちとか」 「それについて詳細を教えてはいただけないでしょうか」 キュルケは先ほどとは打って変わった完璧な礼儀作法でブチャラティに尋ねた。 「基本的なことはギーシュとの決闘のときに教えたが、まあいい。『スタンド』に関しては君達も知っていたほうがいいだろう」 スタンド使いは引かれあう。ブチャラティたちといる限り、他のスタンド使いと遭遇する可能性は飛躍的に高くなる。 そしてそのスタンド使いは凶悪でない保障はどこにもないのだ。 「いいだろう。俺固有の能力は皆知っていると思う。が、ロハンの能力を教えるのは彼の許可が要るな。彼の能力は皆に知られると、戦いになった場合かなり不利になる」 スタンドの説明は露伴の部屋で行われた。まず、ブチャラティが基本的な事を話す。 その途中で、キュルケたち三人はスタンドの基本的なことについて聞くことができた。 まず、スタンドは一人一能力であること。 「つまり、ギーシュが魔法を全然使えなくて、ワルキューレを一体しか呼び出せないようなもの?」 ルイズが自分にわかりやすい表現で聞いてくる。 「まあ、そういうことになるな」 タイプにもよるが、スタンドが受けた攻撃は本体にも同じ効果を受けること。 「……スタンドって、すごく弱くない?」 「いや、そうでもない」 「今のたとえならば、ワルキューレからすべてを老化するガスが噴出していたらどうだ?」 「それにだ。殴ったものを柔らかくする能力なら、おそらく固定化の魔法をかけられているものでもやわらかくすることができるだろう」 「恐ろしいわね」 キュルケが身震いをした。 一同はギーシュの決闘騒ぎのときの、スティッキー・フィンガーズのすばやさをおもいだしていた。 ブチャラティが続ける。おれ自身が体験したことだが、なんとも表現しにくいな。 「時を『吹っ飛ばす』能力なんてのもあったな」 彼を取り巻いているもの全員が首をかしげた。 「そうだな……たとえばだ。タバサ、君が牛乳を飲もうとしてコップを持ち、まさに飲もうとしているところを想像してくれ」 「そのときに俺がその『能力』を発揮したとする」 「そうすると、タバサは、俺が『能力』を使わなかったであろう動作、この場合はコップに口をつけ中のものを飲む、といういう動作を続ける。本人の自覚なしに」 「その途中、意識をはっきりと保っているのは発動した俺自身だけだ。だから、君がミルクを飲んでいる途中にミルクカップをほかのものと入れ替えたり、毒をミルクに仕込んでも君は意識せずのみ続けるわけだ」 「なんてこと」 タバサが嫌悪感に身を震わせる。 露伴はいやいやながら自分の能力について説明した。 「僕の能力は人を『本』にして、記憶を読む。また、その本に何かを書き込むことで、人をある程度操ることも可能だ」」 「土くれのフーケには、『タバサ達を攻撃できない』と書いた。だからタバサに害意を持っていた彼女は動けなくなったのさ」 「その『書く』能力」 「どの程度までできるの」 「例えば、重病人をなおせる?」 タバサが特定の人物を頭に描きながら露伴に尋ねる。 必死な様子が目の色からも読み取れた。 「…いや、君の言う『重病』程度にもよると思うが…僕の『天国の扉』は、基本的に記憶を読むことだからな。何かを書き込むのはおまけみたいなモンだ」 「だから、本人が努力すればできるような…例えば『外国語が話せるようになる』とかなら大丈夫だが、君の話のケースだと難しいな」 「本人の抵抗力が弱ったせいで重病になったのなら治ると思うが……不治の病や、他人の呪いやスタンド攻撃の効果を解除するのは難しいといえる。 『特殊な毒を盛られた場合』なんてのも後者だろうな。ま、実際試してみる価値はあると思うが……」 「そう」 タバサはある決心をした。可能性はあるのだ。試さない理由はない。 件の会話から三日後。 岸辺露伴は彼女と二人でガリア国境を越えていた。 彼らは旧オルレアン家の屋敷に到着し、オルレアン王弟妃に謁見を申し出た。 シルフィードに乗っているので、一両日中に学院に帰還できる。 「もう一度いうが、僕がヘブンズドアーを発現する、ということはだ」 ペルスランと名乗る老執事の立会いの元、王弟妃の前にいる。 露伴が確認する。彼の能力は対象の人物の記憶を読む事でもある。それでもいいのか。と。 「うん、大丈夫。平気」 彼女は大きく深呼吸し、震える声で返事をした。 露伴が王弟妃を『本』にする。 しばらく何かを書いていたが、ため息をついて振り返った。 「すまない」 無理だった。この毒、まさか書き込む文字にまで干渉するとは。 「そう」 絶望を隠さずに彼女が応じた。 「だが、無駄ではなかった」 「何故? 」 「君の母さんは飲んだ毒のことを知っていた。それによると、彼女が飲んだ毒の名は、『ノイエ・シャンツェ』とハルケギニアでいわれている物だ。エルフがつくったもので…ここからが重要だが…『解毒薬』が存在する」 おお。執事が歓喜の表情に包まれた。涙を浮かべている。 「それは高い能力を持つエルフにしか作れないものだが、それを飲めば、正気になるはずだと彼女の記憶に書いてあった」 「だがな、解毒薬を手に入れるのは大変難しいだろう」 実際彼女は……正気に戻れないことを覚悟していた。 「すまない。役に立てなかった」 彼女は頭を振る。目は力に満ちていた。 「一歩前進」 「ロハン」 「何だい?」 「ありがとう」 ルイズはブチャラティとともに露伴の部屋にいた。 「で、タバサの用事ってなんだったのよ?」 もはや日は暮れている。そろそろ就寝の時間だ。 あらかじめ断った後で行動したので、彼女の機嫌は損ねてはいないようだ。 「いや、彼女の家庭にかかわる問題だった」 そうなの。ルイズは素直にうなずいた。そのような事に無用な興味を持つほどには野暮ではなかった。そのような意味では、彼女は完璧な貴族であった。 「それより僕は夜食を食べたいんだ。君たちもどうだい?」 そういいながら、露伴は床においてあるデルフリンガーを手に持ち、鞘を引き抜いた。 「聞いてくれよォー!ブチャラティィィィ!」 「ロハンの野郎、俺様でサラミだのハムだの切らせるんだぜ!」 「奴に何とかいってくれよォォォ!」 「ロハン……なにやってんだ…感染症とかの事を考えろ」 「うん。そうそう…ってヒデェ!」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1189.html
夢を見ていた。 故郷ラ・ヴァリエール家の領地内にある屋敷の、誰も寄り付かない中庭の池にある『秘密の場所』。そこはルイズが唯一安心出来る場所。 幼い頃、叱られるとよくここに来て、たった一艘浮かべられている小舟の中に隠れた。 夢の中の幼い私もその小舟の中に隠れていた。 しばらくするとマントを羽織り、つばの広い帽子を被った『彼』がやってきた。 「ルイズ、泣いているのかい?」 『彼』は夢の中の自分に優しく声をかけた。 「可哀相に…また怒られたんだね…。」 『彼』とは領地が近くにあったことから晩餐会を共にしたこともあり、また父と彼の交わした約束もあって、会う度によく会話したものだ。 幼い頃も、そして会わなくなった今も紳士的だった『彼』は私の憧れだ。 「僕の可愛いルイズ。ほら、僕の手をおとり。もうじき晩餐会が始まるよ。 ……安心して。お父上には、僕から取り直してあげる。」 …今思えばかなり陳腐で芝居がかった言葉である。多分今同じ事言われたら「キモい」と言ってしまうだろう。 それでも夢の中の幼い私は立ち上がると、差し出された彼の手を握ろうとした。が、その時、いきなり足元がぐらついた。 「!?」 私は思わずしゃがみ込んだ。何故ぐらついたのか分からなかった。舟の揺れが収まってから立とうとしたが、立てなかった。違う、身体が怠くて動けないのだ。だんだんと睡魔が襲って来た。 私は助けを求めるように彼を見たが、いつの間にか手はひっこめられ、彼は彼じゃ無くなっていた。つばの広い帽子をしていたが、マントが無くなり、全身が真っ黒だった。しかし、何故かそれをどこかで見た気がし、同時に頭が淋しい気もした。 結局夢の中の私は眠気に耐え切れず、舟の中で眠り込んでしまった。 「はう!」 目を覚ますと学生寮の自分の部屋にいた。 「夢か…って何で夢の中でまで寝るのよ。」 私は自分の頭を触った。…よし、髪はある。 「やっと起きたか。」 ポルナレフがベッドのすぐ側に立っていた。洗濯から帰ったばかりらしく(どこでやってるかは知らないが)籠を持っていた。 「…なんか嫌な夢見たわ。いきなり憧れの人が帽子を被った真っ黒い人影みた…「それ以上言うなッ!」!?」 ポルナレフはそう叫ぶと籠を取り落とし、その場にうずくまった。また何かのトラウマに触れたのだろうか?それにしてもこいつってトラウマが無駄に多いわね。若い頃何やってたのかしら? 「言わないでくれ…あそこはああするしかなかったんだ。さもなければやつに、ディアボロに矢を…」 もうなんだかよく分からない。完全に頭の中がどっかにトリップしているらしい。 「ほら立ちなさい。もう言わないから。誰も責めてなんかないわよ。早く朝ご飯食べにいきましょ?」 ポルナレフは泣きじゃくりながら頷くと私の後についてきた。この姿をあのシエスタとか言うメイドやキュルケが見たらどう反応するだろうとか考えつつ外に出るとほぼ同時にキュルケが部屋から出て来た。 「あら、おはようダーリン。」 とだけ言うとキュルケは私を無視してポルナレフに抱きつこうとした。いつものようにポルナレフは避けると私を指差した。 「なんだ、いたの。いろいろ小さくて全然気付かなかったわ。」 「ちょい待ち。いろいろも気になるけど、こいつの情けない顔見て何も…」 振り返ってポルナレフの顔を見ると普段と全く変わらない落ち着いた表情をしていた。 「何も…やっぱりダンディねぇ…」 キュルケが頬を赤らめる。 いや、それより何でもう元に戻ってんの? 「レディに情けない顔など見せられん。」 「私はレディじゃないのかしら?」 私はにっこり微笑みながらポルナレフの股間を蹴り飛ばした。 今日は何となくルイズに着いて行き、授業を受けることにした。股間の痛みも収まってきたし、気分転換にはちょうどいいだろう。 教室のドアを開け入って来た教師は黒い長髪に黒のマントと全体を黒で統一したスネイプもどきの男だった。 「では授業を始める。知っての通り私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ。」 疾風ということは風のメイジか。 「さて、最強の系統をご存知かな?ミス・ツェルプストー」 「『虚無』じゃないんですか?」 「伝説に…」 この時点でもう聞く気になれなかった。どうせギトーは「風が最強だァーッ!」と言うだけだろう。 土が金属を作り、火が生活のための火を起こし、風は舟を進ませ、水は治癒に関する。つまり優劣等無いはずだ。あるとしても虚無だけが別格といった所か。 ましてや大人と子供では格差というものがある。それを考慮すればあのギトーがキュルケをみせしめにした所で意味は無い。生徒の不満を呼ぶだけだ。 そこまで考えると寝る体勢に入った。どうせ自分は使い魔の平民だ。起こされることはあるまい。 「…残念ながら試したことは無いが、我が風は『虚無』すら吹き飛ばすだろう。…貴様寝ているなッ!」 右手で顔を隠し、左手を半分開け人差し指だけをピンと伸ばし指差してきた。面倒だな… 「生憎俺は生徒じゃなく使い魔なんでな…」 「だからといって寝る奴がいるかッ私が講義しているのにッ!自覚をもたんかッ!」 少しむかっとした。お前よりは人生経験は豊富だぞ。若造が。 「講義?まさか生徒一人吹っ飛ばして『風は最強なんだ。風のメイジは最強のメイジなんだ!』とか自慢することが講義な訳はあるまいな?そうだったら余りにも大人げ無いぞ。」 タンカを切ってやった。生徒達がどよめく。 「おいおい、あの平民頭大丈夫か?」 「まあ、あの『ゼロ』の使い魔だし。」 「さすが平民!俺達に出来ない事を平然とやってのけるッ!そこに痺れない!憧れないィ!」 「大人げないだと…?」 わなわなとギトーが震え出した。そしてどよめいていた生徒達は一気にシンとなり、心配そうに自分とギトーを交互に見た。 「ああ。子供と大人じゃ場数が違うからな。」 ルイズが「やめなさい。殺されるわよ。」と言ってきたが無視する。 「ほう…なるほど、つまり君は自身が痛い目に逢わないと私の言う事が分からないのだね?使い魔君。」 ギトーが杖を構える。多分もう詠唱し始めているだろう。 「貴様も前のギーシュと同族か?やれやれ、反吐がでる…」 立ち上がって机に立て掛けていたデルフリンガーを引き抜き臨戦体勢に入る。トライアングルメイジ相手だ。容赦せずチャリオッツも使ってもかまわないだろう。 ここまで来るとさすがのルイズも「勝手にしなさい。」とそっぽを向いた。 じりじりと距離を詰めていく。相手がまず出す魔法はエア・ハンマーか、あるいはウインド・ブレイクに違いない。 相手の方が射程が広く、シルバー・チャリオッツの剣も風で弾き飛ばされるかも知れない。だがそれを乗り越えるのが闘いの年季というものだ。もうそろそろ相手の射程に入るかな。 「エア・ハンマー!」 ギトーが叫び、身体に空気の塊が直撃する。チャリオッツを使い防御するが剣の先が飛んでしまい自分も風圧に耐え切れず吹っ飛ばされてしまったが、デルフを床に刺しその抵抗で勢いを殺す。そのおかげで壁に激突する前に止まることが出来た。 「ほう、やるじゃあないか。私の風の勢いに剣を刺して耐え切るとはね。」 ギトーが余裕のある声でそう言った。だが、『もう遅い。』 ドスッバタン ギトーの首筋にチャリオッツの剣が刺さり昏倒した。馬鹿め、剣が折れたときに首筋を狙ってやったのだ。最もスタンドが無い貴様には何も見えなかっただろうがな。 さて、後の処理はルイズに任せようか。 「ルイズ、よくやってくれた。私の失態をカバーしてくれるとはさすが私の主人だ。」 俺は振り向き、うやうやしくそう言った。ルイズが戸惑った様子を見せたが、このまま俺に合わせろと目で合図を送る。 「え?ま、まあね。私にかかればあれぐらいお安い御用よ。」 皆一斉にルイズを見た。まさかゼロのルイズが魔法を!?というような表情である。ルイズもそんな皆の態度に少し嬉しそうだ。 皆から「何をしたのか」と聞かれた時にコルベールが入って来た。 金髪ロールのカツラ、レースや刺繍によって華やかさを演出しているローブという明らかに似合わない、珍妙不可思議で胡散臭い恰好をしている。 「ミスタ・ギトー!授業などやっている場合では…なんと眠っておられるのか!情けない!生徒に居眠りを許さないあなたが自分の授業で居眠りするとは!」 …何を勘違いしたらそうなるの… 「はっ!そんな場合ではありませんぞ! …おっほん。皆さん、今日の授業は全て中止であります!」 教室から歓声が上がる。そりゃ誰だって授業が無くなったらうれしいだろう。 だが、コルベールはその歓声を押さえる様に両手を振り、言葉を続けた。 「えー、皆さん。本日はトリステイン魔法学院にとって名誉な日です。我が国に咲く一輪の華、アンリエッタ姫が急遽行幸に参られることになりました!」 教室中がどよめく。 「したがって、粗相があってはいけません。急な事ですが、今より全力を挙げて歓迎式典の準備を行います。各人、正装して門に整列すること」 生徒達は緊張した面持ちで頷いた。 「皆さんが立派な貴族になったこと(この時ポルナレフはギロリとコルベールを睨んだ)を姫殿下にお見せする絶好の機会です。 御覚えがよろしくなるよう、しっかりと杖を磨いておきなさい。よろしいですな!」 コルベールの言葉に全員が重々しく頷くと学生寮のそれぞれの部屋に戻って行った。私も行こうとするとポルナレフはコルベールに目配せして「コルベールと話がある」と言って中に残った。 今更ミスタ・コルベールと話?と気になって教室のドアに耳を当てて盗み聞きしてみると中で 「このスネイプもどきがァ!てめーをこの事だけで20年は減給になるようにしてやるぜ!」 「ゆ、許して~私は…実演しただけだァーッ」 「トンチキがァ!! 俺はてめーのような長髪野郎がでー嫌いなんだ。だがな、俺達はいい奴なんだ。これから毎週2エキューずつ俺達の所に持ってこい。それから生徒から取り上げた物の半分もだ!」 …二人がかりでギトーからカツアゲしていた…。 後で取り分の半分を脅して上納させようかしら?そんな事を考えながら部屋に向かった。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1283.html
『息子』の能力が解除された事により、シエスタ及び村民も元に戻ったが、ルイズ達は状況説明とかをどうするのかディ・モールト心配だったが 「ねぇ…本気で夢で通すつもり?」 「スタンド使いですらなくメイジでも無い連中に、今までスタンドに別の物質に変化させられてました。つって信じるヤツが居ると思うか…?」 「………メイジでも、先住魔法って言われても納得できるかどうか怪しいってとこね」 「一応、怪我人やバラされた連中も居ないみたいだしな、事を荒立てると厄介な事になる」 とりあえず、シエスタ以外はスタンドの事を全く知らないので、夢という事で納得して貰う事にした。というか無理矢理納得させた。 駄目だった場合最悪先住魔法で通すつもりだったが、村や村民に傷一つ無い事から、どうにかなり、本命の『竜の羽衣』を見る事に漕ぎ着けた。 「こっちが寺院なんですけど…さっきのは何だったんですか?」 「あれもスタンドだ。…どういうわけか知らないが、本体は来ずにスタンドだけが中途半端な形で来て暴走してたみたいだが…迷惑をかけたな」 「え!いえ!気にしないでください!皆も無事だったんですし」 暴走状態の息子のせいとはいえ、身内のスタンドの不始末という事でそれなりに対応を取らねばならない。 それで出た言葉が『迷惑をかけた』であるが、意外な言葉にその場の全員が半ば唖然とした顔をするハメになった。 まぁ、列車で乗客を巻き込んだ立場であまり言える言葉ではないのだが、ギャングでも人の子。悪いと思えば謝る事だってある。 世話になった人間を巻き込んだのなら尚更なのだが、ルイズが魔法を成功するぐらいのありえない発言には全員ビビったッ! 「……今、なんて言ったの?」 「ダーリンが人に謝る姿なんて始めて見たわね」 「記録が必要」 「オメーら、何か人の事勘違いしてるな」 何か色々と言いたくなったが、全てメローネが悪いという事でこらえた。 (あのヤロー…戻った時に、まだ生きてたら、あいつのコレクション半分捨ててやる) 相変わらず、あの夢では仲間達の最期の姿を見るが、夢を見てあいつらが死んだなどと納得するほどドリーマーではない。 まだ生きていたらとは思うが、なるべく生きて栄光を掴んでいて欲しいと思う。 敗れていたのなら、それを捨てる事もできないのだから。 そんなこんなで草原の片隅に建てられている寺院に着いたのだが、奇妙な違和感を覚えた。 「…この寺院どっかで見た事ある形だな」 他の4人には聞こえない程度の声でそう呟く。 丸木が組み合わされた門の形。石の代わりに板と漆喰で作られた壁。木の柱。白い紙と、縄で作られた紐飾り。 確かにどこかで見た事がある。 そう思いながら、中に入った瞬間どこで見たかを思い出した。 「…あの茶と同じか」 あの時飲んだ茶と同じ。つまりこれを見たのは日本だと思い『竜の羽衣』に目をやるとそれは確信に変わった。 キュルケやルイズは、気のなさそうにそれを見て、タバサだけは好奇心を刺激されたのか、興味深そうに見つめている。 「こいつは…メローネがやってたゲームであったが…確か零式艦上戦闘機…通称『ゼロ』だったか」 「だ、誰が『ゼロ』よ!」 「オメーじゃねぇよ」 『ゼロ』という言葉に反射的反応をするルイズとそれに突っ込むプロシュートを見て、シエスタが覗き込んできた。 ちなみに、メローネがやっていたゲームは『ゼロパイロット~銀翼の戦士~』だ。 メローネが、操作をミスって建物や戦艦にぶつかる時、いちいち「ジオン公国に栄光あれーーーー!」と叫んでギアッチョにキレられていたので覚えている。 「プロシュートさん、これをご存知なんですか?」 「オレも詳しくは知らないが、五、六十年前の日本の戦闘機だったはずだな」 「せんとうき…ですか?」 「ああ、空戦を目的に作られた飛行機だな」 「これが、こないだ言っていた、ひこうきなんですか?」 「もう旧式だが……アレで見たのが確かなら、最高で時速500キロは出たはずだ」 「時速500キロ?それどのぐらい速いの?」 「1メートルが1メイルってんだったな。五十万メイルを一時間で飛ぶ事ができるって事だ」 「このカヌーに翼を付けただけのようなモノがシルフィードより速く飛んだりするの!?」 「旧式機だからな。今あるやつなら、こいつの2~3倍は速く飛ぶ」 「この翼じゃ羽ばたけないと思うんだけど…」 ルイズとキュルケはそのブッ飛んだ速度についていけないでいる。 タバサの方はこれがどうやって、そんな速度を叩き出すのか興味津々といったところだったが。 「どうやって飛ぶの?」 「…コルベールが作ってたやつがあったろ。アレが発展したエンジンを積んでいて、それでそこのプロペラが回って飛ぶ。 まぁそれだけじゃ飛ばないんだが、翼が空気を掴んで楊力を得る。鳥でも羽ばたいたりせずに、気流に乗って滑空して飛んでる時あるだろ。アレと同じだ」 分かる範囲で説明したが、キュルケ、ルイズ、シエスタは未知の技術に頭から煙が出かかっている。 唯一タバサはシルフィードが滑空している所をよく知っているため、辛うじて理解できていたが、やはりそのとんでもない速度に驚いていた。 「ふみゅ…それでこれ、飛ぶの?」 「…話し聞いてたか?」 「こんなのが、そんな速度で飛ぶなんて急に信じられるわけないじゃない…飛べないって言ってたんだし」 「そういやそうだな…何か他に遺したもんは無いか?」 「えっと…あとは大したものは……お墓と、遺品が少しですけど」 「そいつでいい」 シエスタの曽祖父の墓は、村の共同墓地の一角にあった。他の墓が白い幅広の石でできている中、ただ一つだけ黒い石で作られた墓石があり目立っている。 「ひいおじいちゃんが、死ぬ前に作った墓石だそうです。異国の文字で書いてあるので、誰も読めなくって。なんて書いてあるんでしょうね」 「『海…少………木……、……ニ…ル。』…駄目だな。メローネなら読めるんだろうが…オレじゃあ少ししか無理だ」 「この文字が読めるんですか?」 「ああ、行った事はあるから少しはな。こいつは日本語だ」 「日本語…ですか?」 「オレんとこの世界の国名だな。まぁ文化的に東から来たと言えばそうなる。 …こっちじゃあ見ない色だったから珍しいと思っていたが、オメーの髪と目の色はひい爺さんから受け継いだもんだろ」 「は、はい! どうしてそれを?」 「日本に住んでるヤツらは基本的にその色だ」 再び寺院に戻り、プロシュートは『竜の羽衣』に触れると左手のルーンが反応して光り出した。 「なるほどな…確かにこいつも武器には違いないか。しかし…便利っつーか無茶苦茶っつーか何でもアリだな」 操縦法やシステム、構造まで瞬時に理解できたのだが、何故飛ばなかったかということまでは分からない。 「ベイビィ・フェイスを燃やすんじゃあなかったな。…いや、メローネが居ないのに制御できるわけねぇか」 壊れているのなら、『息子』にパーツを作らせようかと思ったが、スデに終わった事なのでそんな事を考えても意味は無い。 散々探り燃料タンクを開くと、飛ばなかった原因が判った。 「そりゃあ飛ぶわけねーな。残量『ゼロ』。ガス欠ってわけだ」 「ゼロって…何が入ってないの?」 「燃料、こいつの場合ガソリン…まぁこっちで言う風石が無いってこった」 「それじゃあ、そのガソリンってヤツがあれば飛ぶのね?」 無言でそれを肯定すると遺品を取りに行っていたシエスタが戻ってきた。 その古ぼけたゴーグルを受け取る。あのゲームでも確かこんな感じのゴーグルを着けていたはずだ。 「ひいおじいちゃんの形見、これだけだそうです 日記とか、あればよかったんですけど、残さなかったみたいで。ただ、父が言っていたんですけど、遺言を遺したそうです」 「まぁ、下手に遺書にされて日本語で書かれて読めないとかじゃあ話にならないからな」 「それで遺言なんですけど、あの墓石の銘を読めるものが現れたら、その者に『竜の羽衣』を渡すようにと」 「全部読るわけじゃあないが、一応その権利はあるってことか」 「管理も面倒だし……大きいし、拝んでる人もいますけど、村のお荷物らしいんです。少しでも、読めるって言ったら、お渡ししてもいいって言ってました」 「ガソリンをどうにかしない事には荷物には変わりないんだが…何時か使う機会があるかもしれねぇし、ありがたく貰おう。オメーにもまた貸しができたな」 「それじゃあ、それが飛んだらそれに乗ってこの村に来てください。 あ、それともう一つ、『竜の羽衣』を陛下にお返しして欲しい、だそうです」 「そういや、日本にも確か『テンノー』ってのがいたな。まぁ多分それだろ」 「ひいおじいちゃんは、『竜の羽衣』は二つあって、一つはこの村に。もう一つは日食の中に消えたって言ってました」 「消えた…?こんな目立つもんなら他に見付かってるはずだが…日食か…可能性はあるな」 「へ?どういう事ですか?」 「消えたって事は、日食の中に向かって飛べば、イタリア…いや地球に戻れるかもしれないって事だ。まぁ日食なんざ、そうそう起こるもんじゃあないが」 それを聞いてからシエスタが後悔した。『竜の羽衣』が飛び、日食が起これば戻ってしまい二度と会えなくなるかもしれないのだから。 ルイズもルイズで結構テンパっている。 最後の最後で帰還手段かもしれないものが見付かってしまっただけに、どう反応していいのか分からないでいる。 (え…?帰っちゃうの…?) 思考が少しばかりアレになるが、日食が来る時がまだ分からないので何とか持ち直し、とりあえずシエスタの家に行く事になった。 その日、プロシュート達はシエスタの生家に泊まることになった。貴族の客をお泊めすると言うので、村長までが挨拶にくる騒ぎになった。 シエスタの家族を紹介されたのだが…何故か、シエスタの弟達から『プロシュート兄ィ』と呼ばれるハメになった。 ペッシやデルフリンガーから兄貴と呼ばれてはいるが、昔、イタリアで暮らしていた時の家族構成では一番下だったりする。 弟分の面倒を見る事は慣れているが、本物の弟の扱いには慣れていないので 正直言うと撤退決め込みたかったのだが、ベイビィ・フェイスの負い目があるので、とりあえず相手した。 だが、相手をしている姿を他3人に思いっきり見られている事に気付いた時には、天井にブチャラティが居た時の気分になった。 「……なに、全員でこっち見てやがる」 「…い、いや、凄く馴染んでるなーと思って」 「その、たまに見せる意外さがたまんないのよね」 「長兄」 一瞬、全員老化させて忘れさそうかと思ったが、さすがに久しぶりに家族に囲まれ幸せそうなシエスタを見て空気を読んだ。 (オレも結構丸くなったもんだな…) そう思うが、ルイズが聞いたら 「まだ十分すぎるぐらい尖ってるわよ」 と言われる事間違い無しなのだが。 適当に相手し終えると、外に出てシエスタが話していた草原へと向かった。 まぁ特に何もする事が無かったし、身の振り方も考えて起きたかったからだ。 夕日が差す草原の中、一人腕を頭の下に組みそこに寝転ぶ。 「しかし、日食か…自然現象頼りってのが痛し痒しってとこだな」 地球でも十年単位でしか見る事のできない現象なのが辛いところだった。 まして、天文学なぞが存在するかどうかすら怪しいここでは、次に日食が起こる時期すら分かったものではない。 星間連動の結果起こる現象なので、どう足掻こうとそれが変わるものではないため、半分は諦めかけていたが、すぐにそれを否定した。 「どうにも、この事になると違和感があるな…」 その原因が分からないのがイラつくとこだ。 「ここにいたんですか。お食事の用意ができましたよ。弟達もプロシュート兄ぃと一緒に食べたいと言ってます」 クスクスと笑いながら後ろからシエスタが声を掛けられるが その服装は、いつものメイド服と違う、茶色のスカートに、木の靴、そして草色の木綿のシャツという格好だった。 「懐かれるようなガラじゃあないとい思うんだがな…」 まぁ職業暗殺者であるからしてそうなのだろうが、どうもルイズ達の影響を受けて雰囲気というか滲み出る気配の質が変わったらしい。 イタリアに居た時なら多分泣かれてもおかしくはないのだが こっちに来てから、殺した事はあれど状況で殺ったという事だ。仕事として暗殺をした事はない。 そのせいなのだろうとは思うが、あまり納得したくないのが本音だ。 「そんな事ないですよ?わたしも、色々と助けてもらってますし」 一瞬だが保夫やってる姿を想像して頭痛がした。どう見てもそんなキャラはしていない。 そんなのはペッシあたりが適任だと本気でそう思った。 「この草原、とっても綺麗でしょう?わたしも一緒に横になっていいですか?」 無言で、肯定しながら沈みかけている夕日を見る。 しばらく、無言の時間が続いたが、少しばかり言いにくそうにシエスタが口を開いた。 「……もし日食が起こったら…やっぱり元の世界に帰っちゃうんですか?」 「帰れるかどうかは分からねぇが試す価値はある」 「…誰か待ってる人でもいるんですか?」 少し考えたが、ルイズにも話している事だと思い話す事にした。 「生き残った仲間が居るが…こっちに来てから大分時間が経ってるからな… 全員くたばってるか、生き抜いて栄光を掴んでるかのどっちかだろうが…栄光を掴んでいたとしても、そこにオレが入る資格は無いな」 「それなら、帰らずにこの世界に居ても… 父も、ひいおじいちゃんの国を知っている人と出会ったのも何かの運命だろうから、よければこの村に、その…住んでくれないかって」 シエスタがそういい終えると、プロシュートが寝ている周りの草が音をたて枯れ始めた。 「結果がどうあれ、それを最後まで見届けないってのはオレ自身の心が『納得』できねぇんだよ。 万が一、あいつらが全滅してた時は、敵討ちって殊勝なもんでもないが…チームの最後の一人として報いを受けさせる必要がある」 周りの草が枯れている様子を見て、唖然としているシエスタに構わずさらに話を続ける。 「それに、こいつは周りの生物を無差別に老化させ朽ち果てさせる力だ。本来ならオレの周りに人が居ていいはずがねーんだよ」 氷という抜け道はあるが、無差別である事は変わり無い。パッショーネに入団し暗殺チームに属していなければ未だ一人だったろうと思う。 草を枯れさせる中、これで、シエスタが逃げるなりしてくれればいいと思い、周りを老化させているのだが…手をシエスタに握られた時は、さすがに焦った。 広域老化ではないが直で枯れさせている。直はグレイトフルデッドの手で触ったものが瞬時に老化させられる。 つまり、本体であるプロシュートの手を掴めば、少なからずその影響は出る。 「何やってんだオメーはッ!」 老化を解除するが、人間なら僅か数秒で寿命一歩手前まで追い込む直触りだ。 解除すれば姿は元に戻るとはいえ、髪や歯などの戻らないものも当然ある。 「………ふぅ…周りに人が居ないなんてことないじゃないですか」 「…無茶しやがる…髪や歯が抜けるだけならまだマシな方だが…下手すりゃあ死んでんだぞ」 元に戻ったシエスタを一瞥するが、髪や歯が抜け落ちた様子は無い。 老化させた事はもう数え切れないが、老化中に氷も持たず直に自ら飛び込んできたヤツは初めてだ。 その行動に今度はプロシュートが唖然とする番だったが、そこをシエスタに小突かれる事になった。 「……ッ」 「プロシュートさんはもっと『自信』を持ってください! わたしを二回も助けてくれたじゃないですか…人を助ける事ができる力を持った人の側に誰も居ないって事なんて無いんですから」 その言葉にまた、沈黙が続いたが、今度はプロシュートがそれを破った。 「クク…ハハハハハハハハ!」 笑った。パッショーネに入団してからは無かったが、ここに来て久しぶりに本気で笑った。 チームのヤツらと居るときも笑った事はあるが、ここまでは無い。 まして、ハルケギニアに来てからは薄く表情に出した程度だ。『魅惑の妖精亭』のアレは営業スマイルなので数に含まれてはいない。 シエスタもシエスタで面食らっている。今までの行動からして、まさか笑われるとは思っていなかったからだ。 「その…す、すいません…わたし、何か拙い事を言ってしまったんじゃ…」 「ハハ…いや…まさかオメーに『自信を持て』なんっつー事を言われるたぁ思わなかったからな」 ペッシにもルイズにも言った言葉が、自分に向けて。しかも、最も戦いと掛け離れたシエスタに言われるとは思いもしていなかった。 一頻り笑った後、笑った姿を見て、心なしか少しだけ明るくなった声でシエスタが答えた。 「もし…もしですよ?日食の中に入っても戻れなかったり イタリアって所に戻って『納得』する事ができれば、この世界に戻ってきてくれますか?わたし、何もできないけど待つことぐらいはできますから」 「日食で戻れなかったとしても、戻る事を諦めるわけはねぇし、戻ったらこっちに来る方法が無いからな。そいつはオレよりルイズに言ってくれ」 「それでも、待ってますから」 「アテが無いのに待たれても困るんだが…まぁそいつはオメーの自由だ。好きにしろ」 「そう言えば、さっき学院から伝書フクロウが届いて、サボりまくったものだから 先生方はカンカンだそうですよ?ミス・ヴァリエールやミス・ツェルプストーは顔を真っ青にしてました」 「タバサの鉄仮面っぷりはリゾットといい勝負だな…一度会わせてみたいもんだが…日食が起こったらあいつを連れて行くか」 「そそ、それなら、わ、わたしを連れて行って、く、ください!」 「…本気にするとは思わなかったが、冗談だ。他の世界のヤツを連れてく程、堕ちちゃあいねぇよ」 「え、あ…そうですよね!冗談ですよね、驚かせないでください。わたしの事も書いてあって 学院に戻らず、そのまま休暇をとっていいですって。そろそろ、姫様の結婚式ですから。だから、休暇が終わるまで、私はここに居ます」 「アレはオメーの家のもんだからな。ガソリンをどうにかしたら、飛んできてやるよ」 「『ゼロ』でしたっけ、その時はわたしも乗せてくださいね」 「そいつに関しては…まぁ一応約束はしといてやる」 シエスタは先に戻ったがプロシュートはまだ残った。 「……3秒やるから出て来い」 そう言うと、草原からルイズが顔を出した。 「…いつから気付いてたのよ」 「そりゃあ、最初からだ」 うぐ、と言葉が詰まり何も言えなくなる。 最初からというと、プロシュートとシエスタが草原に横になっているのを見つけた時からという事だ。 「……それじゃあ…なんで、今まで何も言わなかったのよ」 「用があるなら出てくると思ってたが、出てこなかったんでな。それで放っといても出てこねぇから呼んだってわけだ」 「気付いてるなら、言いなさいよ…わたし一人バカみたいじゃない…」 「しょお~~がねぇだろ、オレはリゾットみてーに洞察力が高いわけじゃあねぇんだからな」 また、『リゾット』という名前が出て、前々から名前だけは聞いていただけに、プロシュートの仲間がどういう人達なのか聞きたくなった。 「ねぇ…前から言ってるあんたの仲間の事教えなさいよ。べ、別に深い意味は無いわよ!ちょっと気になっただけなんだから」 「ま…どうせ、あいつらはこれねぇからな。そうだなまずは……」 出来てるんじゃあないかともっぱらの噂のソルベとジェラード。 『しょぉおお~~~がねぇ~~~なぁ~~~』が口癖でスタンドの使い方を最も良く知っているホルマジオ。 鏡の中に入る事ができ、能力的にはほぼ無敵を誇るイルーゾォ。 自分の弟分で、スタンドは強力だが、まだまだ精神的にマンモーニなペッシ。 趣味は変態的だが、情報処理と追跡能力に関しては皆に頼られていたメローネ。 キレやすく手に負えない事が多いが、その実、仲間のために真っ先に動こうとしたギアッチョ。 そして、自らが最も信頼し、クセのありすぎるチームを纏め、タバサの如く表情を崩さないリゾット。 全員の事を話すと、黙って聞いていたルイズが話し始めた。 「…それで、やっぱり日食が起こったら…帰るの…?」 「そりゃあな。聞いてたとは思うが、試すだけの価値はある」 「…帰って何があるのよ…!仲間が生きてたら、姿を消すんでしょ!? 全員…死んでるなら、一人で組織ってのに戦いを挑むんでしょ!?死んじゃうかもしれないのに…何でよ…!」 半泣きでルイズが喚きたてる。 「諦めが悪いんだよ…オレはな。つーか何でオメーが泣く必要があんだ」 「あ、あんたはわたしの使い魔なんだから、心配するのは当然じゃない…!」 「少なくとも日食が来るまでは居てやっから泣くな。このマンモーニが」 「…マンモーニって言わないって約束したじゃない。なにもうあっさり破ってるのよ、馬鹿ハム」 「ウルセー、マンモーニにマンモーニと言って何が悪い」 「ま、また…!馬鹿ハム!」 「ハッ…!マンモーニのルイズが」 「馬鹿ハム!」 「マンモーニが」 「この…ば……ばばば馬鹿ハムーーーー!躾けてやるーーーーー!!」 「やれるもんならやってみやがれ」 「うるさーーーーーい!ファイトクラブだッ!!」 そう叫んだルイズが鞭を取り出し振り回すが、それを全て避ける。 「よ、避けるなぁーーーーーー!!」 「避けないでどうする。オメーはサボった事でも心配してろ」 その様子を少し離れた場所から、キュルケとタバサが見ていた。 キュルケが何か微笑ましいものでも見るかのような笑みを浮かべながら 「やっぱり、あの二人って、兄妹みたいよね。目的は達成できなかったけど…あたしの入る余地はまだ十分って事よ」 タバサはキュルケを見て、少し考えたが聞こえない程度の小さい声で 「七転八起」 と呟いた。 プロシュート兄ィ ― ヤバイ『アニメルート』へIN! ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1905.html
厨房でないとすると、私達は一気に行き場を失って早くもぐだぐだし始める。 特に良案も浮かばなかったので一旦中止!テラスで休憩。とりあえずはキュルケの使い魔・フレイムに捜索を頼んだ。 「そうよルイズ、貴方の使い魔なんだから、視覚でも聴覚でも共有すればいいのに。」 「うぐ。・・・・出来るんならとっくにしてるわよ!私の使い魔は他よりずうっと変なんだもの、出来ない事もあるの。」 「出来る事は?」 「あーあーあー聞こえない聞こえなーい」 ばつが悪くなって、カップに少しだけ残った紅茶でずーずー音を立てる。(先生方に見つかったら絶対に怒られる) キュルケは虚空に視線を逃がし(フレイムの視界を覗いているのだろう)「ゴミ箱の中も、花壇の裏にも居ない」と 半ば自棄を起こしたように呟いた。見なくたって居ないと判るところを探すほど、本当に、消えちゃったみたいに居ないのだ。 「タバサ、何か思いつかない?居そうな所。」 「消えた。」 「消えたあ――――!!」 うおう、何事。すっかり諦めムードで和んでいた私達の耳朶を強打する声、主はモンモランシーだ。 彼女らしくなくうろたえて、ツカツカとルイズに詰め寄る。 「ギーシュが朝から居ないのよッ!荷物も杖も部屋に置きっぱなしで居なくなっちゃったの! そしたら貴方の使い魔も居なくなったって言うじゃない!ねえ、まさか仕返しとかしてないわよね?確かにギーシュはやりすぎたけど、彼だって・・・・」 「しししししないわよそんな陰湿な!多分恐らくしないと思うわ、いくらイルーゾォでも・・・・」 ・・・・どうだろう。見た感じ陰湿そうだし意外と行動力があるし。正直自信ない。 自分の言を今一度見直す私をぐいと押しやって、話を聞いていたキュルケがきっぱりと言い放つ。 「ダーリンはあれだけ正々堂々と戦ったのよ!仕返しなんてギーシュがしても、ダーリンはしないわ!」 言い切った。すごいなあ、その信頼は何処から来るんだろう。私イルーゾォの事良く知らないんだもの。キュルケはもっと知らない筈だけど。 「ギーシュだってしないわよ!」 そうかな、しそうだけどな。影から、とか。 あっという間に口論を始めてしまった恋する女二人(ただただ感心するばかりだった。恋は盲目って奴かも。)を眺めていると タバサがくい、と袖を引いた。 「何?」 「ギーシュが消えたなら、『イルーゾォ』は帰ってくる。」 タバサはまっすぐな目でこちらを見て、「よかった。」と微笑んだ。(笑うところは始めてみた気がする。) 「・・・・何故?」 「彼は魔法を知らなかった」 「そうよ」 『イカレてんのか?』は思い出すだけで腹が立ったけど、そう、確かに彼は魔法を知らなかった。 (その癖自分は魔法としか思えないような方法で消えたり消したりする。) 「帰ってくるつもりがないなら、魔法は知らなくていい。一人で消える。 ・・・・ギーシュをつれて消えたなら、彼は魔法を知りたいの。」 そこまで言ってタバサは、視線を本へと戻した。 ルイズの使い魔の平民は、何故か勝手知ったる様子で僕の部屋(だと思うんだけど、左右が反転している)を歩き、 勝手に僕の椅子に腰を下ろしてから「まあ座れよ」と言った。 「自信がないけど言わせて貰う、ここは僕の部屋だろう?」 「お前の部屋だけど『オレの世界』なんだ」 いいからさっさと座れ、とこの上なく邪険に扱われて、しぶしぶもう一つの椅子を引き寄せ・・・・ようとしたら 椅子の方から勝手にこっちへ来た。レビテーションというよりは、見えない使用人が気を利かせたって感じだ。 「そんなにビビるなよ、お前臆病だって言われないか?カッコ悪いぞ?ちょっと世間話をしようってだけなんだ」 何か凄く言いたい放題言われてる気がするけれど、まあいいさ、座ろうじゃないか。 良くわからない事だらけだが、今は害意が無いらしい。それならまあ、世間話くらい付き合ってやっても構わないよ、僕としても。 「実は昨日、最高に頭の痛くなる噂を耳にしたんだよ。魔法が何とかって」 「魔法?」 「ある訳無いよな?(・・・・無いって言え)」 「無い訳ないじゃないか、此処を何処だと思ってるんだい?」 「そんな難しい事オレに聞くな!」 おお、頭を抱えたよ。魔法を知らない平民なんて何処の田舎に存在したんだろう。ルイズの奴、器用に召喚したものだ。 でも、そうなるとこの意味のわからない状況はなんだろう。無意識で使える魔法なんてあるのか? 「スタンドを『魔法』って呼んでいるのかも知れない、とも思ったんだ。でもお前は確かに見えてない」 (マン・イン・ザ・ミラーがギーシュの眼前で猫騙しをして見せた。遊び心だ。) 「『スタンド』?」 「『別』、なのか・・・・スタンドとは別に、ここには『魔法』があるんだな・・・・?」 そのスタンドってのは一体何だい?彼が魔法を知らないように、僕は『スタンド』を知らない。好奇心がツンツン(ry ブツブツと何かを呟く平民は(どうやら『魔法』を信じるか否か、自分に折り合いをつけているらしい。)意を決したように一呼吸置くと、 「『魔法』について教えてくれ、何も知らないんだ。」と言った。 「だが断る!このギーシュがもっとも好きなことのh」 「・・・・『世間話』は既に、『拷問』へと変わっているんだぜ・・・・!」 「すいません調子乗りました。だけど少し待ってくれよ。僕は思うんだけれど」 何も無いはずの場所から物凄い威圧感を感じて脂汗をかきながら、僕は続ける。 「君は僕との決闘に引き分けた!・・・・・・・・あ、うん、別に君の勝ちだっていいんだ。うん。そっちにしておこうかな・・・・ それだから、もう僕達の間に『貴族』と『平民』の落差は無い事になると思わないか?そうだろ?」 「お、おお。」 「だったら『対等』だ。何も困ってる君を見捨てようとは思わないさ。 僕が『魔法』について教えてやるのは全く構わないから・・・・君の言う『スタンド』って言うの、僕に教えてくれないか?」 僕は『戦い』を経て彼に、一種の絆のようなものを感じている。お互いを認め合った男の友情って奴だ。 彼の方はどう思ってるか判らないけれど・・・・ 「イルーゾォ。名乗るのはすっかり忘れてたな。」 ・・・・ね。 (いいや俺が上!貴様が下だ!) 何を隠そう、この手の質問をギーシュにしているのは、この先何度戦ってもこいつには勝てると踏んだからだ。 他の奴は(認めてしまおう、全員魔法使いらしい)何が出来るんだかさっぱりわからないが、 少なくともコイツは先日、『全力で戦う』とハッキリ言った。それで勝ったんだ、恐れる事は無い。 シエスタ以外に協力者が出来れば正直ありがたいし、 考えてみれば『スタンド能力』だって『魔法』と同じくらいにファンタジーでメルヘンだ。 交換条件としてこれほど適当なものも無い。悪くない・・・・か? 『虚無』という魔法の使い手は今は絶え、魔法の属性は現存するもので土・水・火・風の四種類。 一人一つ以上得意科目のようなものを持ち、(それに関する『二つ名』を持つんでわかりやすい。ギーシュは『青銅』、土だ。) 優秀な魔法使いほど使える魔法や属性の数が増える。 「『微熱』『雪風』『香水』『風上』・・・・ああ、あとそうだね。『ゼロ』だ。」 「ああ、聞いた事がある。ルイズだろう?爆発ってことは火属性か?」 「何でもかんでも消し飛ばすのが火属性だと思ってたらキュルケに怒られるよ。 ・・・あれはな、魔法が失敗してるだけさ。『レビテーション』でも爆発、『アンロック』でも爆発、所により大爆発・・・・ 『魔法の成功率ゼロ』のルイズ。あいつに属性なんて無いよ。」 ――――失敗?てっきり『爆発させる魔法』だと思っていたが、あれは事故なのか? 少し違和感を感じる。確かに『爆発しか出来ない』のは不便かもしれないが、威力が異常だ、十分戦力に・・・・ ・・・・平和ボケしきったこいつらは、そんなこと考えないのかもしれないが。 だが『なんでも爆発する』のは危ないな。やはりルイズには要注意だ!とんでもない事が起こりそうな気がする―――― 他にはコモン・マジックだとか呼ばれる属性の関係しない魔法も存在し、難易度はずっと低いらしい。(それもルイズは失敗するらしいが) まったく『魔法』って奴の数は限りなく膨大で、オレ達の『スタンド』は往々にして単一の能力しかないものだから、 成る程『魔法』のイメージに違わずなんでも出来るって印象を受けた。これから先魔法使いと戦う羽目になったら、随分面倒な思いをするだろう。 「なあ、これぐらいでいいかい?僕ばっかり喋っているじゃあないか」 「がっつくなって、まだ全然わからねえよ。」 「じゃあ実際にいくつか見せようか、その方が早いかもね」 そうだな、実際詠唱だのなんだのオレにはイマイチピンと来ない。危険さえなければ実際に見てしまったほうが・・・・ 「あれ?」 左右の狂った部屋で不便そうに、『造花の杖』を探し出したギーシュは違和感を訴える。 杖が机に、机が床に接着されてしまったように、ぴくりとも動かないのだ。 「どうした、何してる?」 「杖がないと魔法は使えないんだ。けれど、あれえ・・・・?」 「ふうん。」 ギーシュが悪戦苦闘する様を見て、『杖を渡してやる』ついでに『スタンド』の事を少しだけ、教えてやってもいいかと思う。 『マン・イン・ザ・ミラー』は性質上、有利な状況と不利な状況が露骨に分かれて危なっかしいんだが、 どうせこいつ等に『マン・イン・ザ・ミラー』は見えないんだ。いいかな・・・・
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/121.html
ルイズは魔法で空を飛んでいくクラスメイトたちを眺めながらため息をついた。 もし、大型の鳥や竜を召喚できていれば自分もあの中にいたのだ。だが、所詮 それは自分の力ではない。彼女にまとわりつく劣等感を消し去ってくれるよう なものではないのだ。深呼吸をして甘えを捨て、傍らに座っている男に声をか けた。 「ンドゥール、いくわよ!」 「魔法学院とやらにか?」 「そうよ。最初に言っとくけど、盲目だって言ってもあんたは使い魔なんだか らね。ちゃんと私に従いなさいよ!」 「………まあ、それはかまわん。おおよその事情は聴いて理解した。どうやら 俺はお前に助けられたようだからな。おかげであの方の不利になるようなこと もない」 「あの方?」 「なんでもない」 ンドゥールはよどみない動作で立ち上がった。杖を突いているが、しっかりと した足取りでルイズの傍に近寄った。彼女はその大きな背と体格に気圧されて しまう。 「どうした? 行かないのか?」 「行くわよ。いわれなくても」 ルイズは男に背を向けて歩き出した。早足で草原を闊歩し、遥か先を飛んで いる連中を見ていた。さすがに気になったので後ろを振り向くと、ンドゥール はまっすぐ彼女の後ろをついてきていた。ためしに立ち止まってみると、彼も ルイズの傍で止まった。 「あんた、本当に目が見えないの?」 「ああ。そうだ」 「その割には私の居場所がちゃんとわかってるみたいじゃないの」 「足音でわかる。目が見えない分、耳が発達したのだよ。なんならお前のクラ スメイトの会話を教えてやるが」 「いらないわよそんなの!」 ルイズは大声で却下した。だが、何の取柄もない男ではないということには 少し安堵した。しかし、うそをつくようには見えなくとも本当にそんな聴力が あるのかどうかは疑問に思ってしまう。なので、その能力を確かめるためにこ んなことを尋ねた。 「ねえ、ンドゥール。あいつらの名前を適当に並べて」 「ギーシュ、キュルケ、モンモランシー、タバサ……」 「本当、みたいね。もうあんな遠くにいるのに」 ルイズの視線の先に豆粒ほどの小ささになった同級生の姿があった。彼らは今、 使い魔にどんな名前を付けるかで考えが一杯なのだろう。もしくは彼女を揶揄 する会話で忙しいか。 「そういえばルイズ、念のために聞いておくがエジプトという国はあるか?」 「なにそれ。初めて聞いたわよそんな国?」 「知らなければかまわんよ」 ンドゥールはほんの少し憂いを帯びた表情になった。ルイズは彼の『あの方』 という言葉を思い出した。もしかしたら大事な人だったのかもしれない。自分 のせいで引き離してしまったのかもしれない。 彼女の心に罪悪感が湧いてきた。 「ンドゥール、あの方って誰のことなの? あなたの恋人?」 その質問に彼は、ほんの一言だけ答えた。 「俺が唯一忠誠を誓った人だ」 ンドゥールは誇らしげだった。そこにはルイズの知るどんな騎士よりも高潔で 頑なな意思があった。しかし、彼女の心にはそれを素晴らしいと思う気持ちと 同時に恥や悔しさに似たものまでもが生まれた。 彼は『唯一』といったのだ。つまり、ルイズには忠誠を誓っていない。 使い魔に忠誠を誓われていないメイジ。 幼い心に棘を作るには十分な事実だった。 使い魔召喚の儀式より数日、ンドゥールはルイズより与えられた仕事を黙々 とこなしていった。やれ掃除に洗濯、着替えの手伝いなど召使い同然の扱い だったが文句一つ言うことはなかった。そんな彼は盲目であることから同情 を引くこともあったがほとんどのものはその立場の違いから気遣いを見せる ようなことはない。しかし、平民であればその限りではなかった。 太陽が注ぐ中庭、そこでンドゥールは一人の少女と洗濯に励んでいた。 彼女の名前はシエスタ、この学院で働く平民である。 「どうだ?」 「綺麗に落ちていますよ。もうずいぶん慣れてきましたね」 「君のおかげだ」 ンドゥールは礼を述べた。彼がシエスタと話をするようになったのは、初日 のことだった。ルイズの服の洗濯を命じられたものの、盲目なため汚れが落 ちているかどうかの判断ができなかった。そんなときにちょうどよくやって きたシエスタが声をかけ、手伝いをしたのがきっかけだった。 服と下着を絞り、よく脱水をしてしわを伸ばしてから物干し竿にかけていく。 「それにしてもンドゥールさん、どうしてそんな甲斐甲斐しく世話をしてい るのですか?」 「ルイズのことか?」 「はい。その、なんでも辛く当たっているとお聞きしました。お逃げにはな らないのですか?」 それに、とシエスタは続けたかった。彼が雑用を押し付けられているだけで なく、粗末な食事だけしか与えられていないこと。およそ人間らしい扱いを されていないこと。 だが彼は、ただ首を横に振るだけだった。 「そうするわけにはいかんのだよ」 「なぜ、ですか?」 「俺はあの少女に命を助けられた。ならばその恩を返さなければならない。 それが俺の礼儀だ」 ンドゥールはそう言って宿舎に戻っていった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/662.html
「…フンッ なんか知らないが! 知恵をつけたサルのように自信を持ったものだなァ――使い魔君ッ」 血だらけなのにひるむ様子を見せない仗助にすこしたじろいだギーシュだったが 自らの勝ちは揺らぐまい! その確信は変わらなかった 「…やってみろよぉ――『レビテーション』をよ…グラモンさんよ…」 「そうか反省したいか! ならばくらえ『レビテーション』ッ」 ギーシュは杖を振り上げて自ら編み出した必勝パターンに再びハメようとした …はずだった! たしかに奴に魔法はかけた 浮き上がるレビテーションの魔法をだ そしてたしかに浮かび上がっていった… 事実だけ見ればその通りだった 一瞬、浮かび上がったのをギーシュも確かに目撃した だが次の瞬間 仗助はそこにいなかった 何があったか、すぐに検討のついたギーシュだったが! 「…バカなッ」 キュルケとの戦いであれだけ何度もやっていたのだ あの対策も含めてのレビテーション殺法である やつのアレは精密性には欠けていたのではなかったか? だから身体を不安定に浮かせてやれば無力化できるはずではないのか? それが…なんだ? なんだ、あの『ゴーレム』は? ドドッ ギュンッ ギュンッ 飛び始めたが一直線! モノスゴイ速さで遠ざかっていく 壁に向かって! そして壁を蹴り地面を蹴り ジグザグ走行で迫ってくるッ 土煙をまきちらしながら! 今ようやくわかった 『見えない拳』はあの『ゴーレム』だ やつが身体の中に飼っているアレが第二の手足のように殴ったり蹴ったりしていたのだ どうして今いきなり見えるようになったかは知らないが そんなことはどうでもいいッ 右ッ! 左ッ! やつは視界を外れながら接近してくる いくら魔法でも「見ていない」ものを飛ばすことなんぞできない 仮に見えても速すぎる なんてこと 対策されてしまったッ 「だが決定打をぶち込むにはッ 近づいてくるしかないよなぁ――ッ!! ぼくのワルキューレの獲物はランス…」 「ドラァ!」 ドゴワ メココォ ベキッ 「ふぐげぇ――ッ」 ドシャアッ 側面から軽快なステップで飛んできた仗助から飛び出す『ゴーレム』の拳は ワルキューレの顔面と右腕と脇をしたたかにえぐり ギーシュもろとも殴り飛ばした 鼻血噴出! 鼻(ハガ)の骨(フニ)が折れた (…そっかぁー ぼくはバカかァ―――? ぼくにまっすぐ向かってくるしかなかったからこそのランスだったわけでぇ――) 必死で魔法を繰り、ワルキューレを立ち上がらせ 武器を構えさせたギーシュは絶望する 「取り回しが悪すぎるッ どうにもならない!」 「ドラドラァ」 メシ ビキビシッ グシァ みっともなく尻で後じさっている目前でワルキューレがクズ鉄と化してゆく 一撃でバラバラにぶっ飛ばしてしまうほどのパワーはないようだが なんという数を打ち込んでくるのだ 全身へこみヒビ割れだらけの青銅人形にもはや戦闘能力は無いッ だがギーシュはこれに頼るしかない なぜなら… (こんなブザマをさらすとは思わなかったが! 必殺のカードは未だ! ぼくの背後に伏せられている――― カウントダウンして待ちかまえてやろう そうだ、そのまま…来い) あまりの逆転劇にボーゼンとしているのはルイズ 使い魔から現れたゴーレム(?)がギーシュのワルキューレをぶちのめしていく 自分のゲンコツにもピリピリひびいてくるようだ 青銅を殴る音響と反動が… 「いたたっ…」 はずれた右腕の間接にもさわって、つらい わたしでこうなら、あんな血まみれで戦ってるあいつは… 旗色がよくなったのは喜んでやってもいいけど、このままじゃ死んでしまうわ もーまったく! どこまで手間かけさせる気なのよッ こんなの絶対おかしいわよ どーして呼び出した使い魔にここまで困らされなきゃいけないの? 理不尽じゃないッ 野次馬こいてるクラスメートたちの方へヨタヨタと駆け出すルイズはこの瞬間 内職倍増が決定していた そこに目ざとくやってきたのはキュルケ…なによそのウレシそうな顔は? 「あら、なかなか絵になるカッコじゃない」 「っるさいわね! イヤミなんか聞いてるヒマないのよッ」 「またお金貸しなさいって? フフフ」 「このままじゃ、そのっ…元も子もなくなっちゃうじゃない あんたも、わたしもッ」 「いいけど… ちゃんと返しなさいね、でないと」 「くどいのよ!」 期日までに返せなければ わたしの使い魔はツェルプストーにとられる そういう約束でお金を貸されたのだ ハイと言うしかなかった 使い魔が起こした騒ぎの賠償金でわたしの財布はスッカラカンになり 治療に使えるお金が残らなかったのだ 屈辱だわ ムカツクわッ そう 治療にはお金がいるのよ だからまた借りるのよ 考えてみればプライドなんかとっくの昔に売り飛ばしてたわね ああまったく! さっさと他のみんなに終わった後の治療を頼んで回らなきゃ わたしじゃどうにもならないってわかりきってるもの あああ くやしい くやしい くやしい 痛いけど泣いてやらない バカにされたくないものッ 「…どこ行くの? タバサ」 キュルケの声に振り返ってみた 一番いそうにない野次馬がいたことに今、気がついた タバサ…何を考えているかワカンナイやつ 聞いた話だとシュヴァリエ…騎士の称号を持っているらしいけど めったに口をきかないから、わたし自身は全然知らない でも、そのあとの言葉は軽く扱えなかった 「決闘が汚されている」 「え?」 「だまし討ちで殺すつもりなら、これは決闘じゃない」 タバサは杖を引き抜いた 「…クッ、ハハハ、見事だね使い魔君 実力を隠していたか」 「知らねぇーよ テメーにゃプッツンしてるッスからなぁー それだけか? 自慢のワルキューレさんはよォォ――」 「さあね、フフフ…右かな? 左かな? まだまだ土の中に隠れているかもしれないぜ?」 「そーっすかァ― だったら今すぐテメーを秒殺すりゃー問題ねーって話だなぁ――」 「やれるものならきたまえよ! きたない鳥の巣頭君!」 プププッチ――ン 「クレイジー・ダイヤモンド!」 「ワルキュゥゥーレッ!」 仗助の身体からクレイジー・ダイヤモンドが飛び出す 天の平たい兜 筋骨隆々の肢体にハート状のプレート装甲! 全身の姿がギーシュに襲いかかっていく そこへ割り込む半壊したワルキューレに向かって十数発の鉄拳がめり込んだ 「ドララァァ―――ッ」 バキ ワシャ メコ グラシャア! 今度は耐えきれなかった バラバラに砕け散るワルキューレ その後ろをギーシュは魔法で滑空していく むろん仗助はすかさず追いかけた クレイジー・ダイヤモンドの脚力で真正面へダッシュ! ぶちキレたなら細かいことは考えない 胸ぐらつかみ上げてレビテーション封じてやる そのはずだったがヤツの目前! ふみこんだ瞬間足が沈む! 「こ こいつはッ」 「ハハハッハァ――― キミという男は進歩がないィィィ―――ッ!! すでにヴェルダンデに掘らせておいたのだッ」 浅く掘った落とし穴! あのときと同じでハマッたものの足首をあっさりへし折る! 「そして死ね!! ワルキューレはぼくの背後、六体いたッ!!」 ズボボ ガシャ シャ ギシャ 土から顔を出した六体のワルキューレが頭上に思い思いの武器を突きだし槍ブスマを形成! ギーシュが横にチョイとかわせば つんのめった仗助はメッタ刺し! だがすぐにわかること…考えが甘かったのは そう、真に考えが甘かったのは! 「ドラァ!!」 バギ メシャア 仗助にはギーシュの顔面をぶん殴ることしか頭になかった 最初から! クレイジー・ダイヤモンドで四、五発殴って 結果的に反動で前のめりを回避! そして、脱出しかけたところをぶっ飛ばされたギーシュは 「ふん、が、ぐっぐ…おげぇ」 自分で用意した槍ブスマに背中から突っ込んでいた 左肩、右胸、下腹を剣や槍が貫通! あわれ右足に至っては切断されて向こう側に飛んでいっていた 勝負ありだったが野次馬もわくどころではない 誰も、こんなものを見に来たわけではないのだから… 「なんつー、えげつねぇものを…まじに殺す気だったのか? てめぇ…」 またも折れた足首を引きずって 仗助はずりずりとギーシュに向かう 警官である祖父に聞いたことがあった ひどいケガをした人間は死ぬ間際、全身が痙攣(けいれん)すると… すでに、それが始まろうとしているのだ 一歩間違えば、今ああなっていたのはオレだった こいつはそういうことをやらかした 自業自得ってやつだ 「…でも、オレはイヤだね」 クレイジー・ダイヤモンドは壊れたものをなおす能力 さわるだけでこいつを助けることができる… 這いずって、やっと、さわれた 身体から槍や剣が抜け落ちて、ふっ飛んだ足も血溜まりも元の通り、何ごともない これでよし 仗助はその場にばったりと倒れ伏した なんか、今までみなぎってた力が一気にぬけてくみてぇだ …だれか、駆け寄ってくるな? 「お、おまえ…使えるんじゃない、治癒の魔法!」 「ああ、おめーかよ」 「バカじゃないの? どうして自分に使わないのよ、死ぬわよ、おまえッ」 イテテテッ、ムリヤリ頭を起こすな 身体ひっくり返すな そんでもって耳元で怒鳴るな! キズにひびくじゃねーか… 腹の中で不平をタレまくりながらも仗助はちゃんと答えてやる 「…オレの力は、自分自身には使えない よくわかんねーけど、そういうルールらしい」 「っ…だったら、だったで! どうしてこんなヤツを助けるのに使うのよ! おまえをだまし討ちで殺そうとしたサイテーのヤツじゃない」 「オレは人殺しはイヤだね! …それによ」 ギーシュの方へガンバって首を向けてみる仗助 「死んだら反省できねーだろーがよ、こいつ」 …あ、いつの間にか これっていわゆるヒザマクラ? ルイズに首を向け直す最中 ふと仗助は気づいてしまった そういやこいつ さっき片腕壊してたっけ オレをかばってよ… まあいいや 役得、役得 ザマミロ! ヤワラケー! タマンネー! ゴスン なにか伝わってしまったらしい 一気にムスッとしたルイズは仗助の頭を地面に落っことし 今度は左腕を肩に回そうとしてきた 「このドスケベ使い魔」 「イテテ…ンだよ、オレは使い魔じゃねぇーぞ」 「黙んなさい、これからおまえを治療しなきゃいけないのよ …重い~ 自分でも立ちなさいよッ」 「ムチャ言うな、折れてんだよ…」 文句は言うがよ、今はこいつの肩でも借りるしかないな… 仗助の右腕もまた、ルイズの背にかかっていた :東方仗助 この後ルイズのクラスメート達からの集中治療で応急手当完了 翌日、騒ぎを聞きつけた教員から全員そろって怒られた上でちゃんとした治療を受けた 全身包帯まみれに逆戻り :ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール 仗助とともに治療を受け、翌日一緒に怒られる かなり不本意だったが、ここはご主人様の情け深さを示してやることに :ルイズのクラスメートたち 治療代を請求したものは誰もいなかった :キュルケ・フォン・ツェルプストー ルイズの借金が増えなかったことに苦笑混じりの舌打ち 怒られる最中も終始楽しそうだった :ギーシュ・ド・グラモン 翌日の昼食時にはすでにひとりだった 彼のまわりには誰一人近寄らなかった :タバサ 「………」 出る幕はなかった 杖をしまって引き返す ドット以下とはいえ 治療する人数があれだけいるのだ 自分があえて出て行って目立つ必要もない… 目立ちたくもないのに助太刀などしようと思ったのは なんのことはない 相手を下に見て虐げるやり口に吐き気を感じただけだった 「あの女」の趣味とまるで一緒のこぎたない企みをにぎりつぶしてやるのに 大してリスクを感じなかったからである そう…ギーシュの用意した、あの槍ブスマ あれはルイズの使い魔に『拳と槍の勝負』を持ちかけたときに使うはずだったものだ だました上で冷静さを奪い、バカ正直に突っ込んできたところを串刺し! それが悪いとは言わないが、何が名誉をかけた決闘だ 単におまえは相手の生命をオモチャにして遊んでいるだけだろうがッ そんなやつが勝利する高笑いを想像したらムカついた 自力でそれをひっくり返してみせた、あのルイズの使い魔は ずいぶん久しぶりに『痛快』な気分というのを思い出させてくれたが…問題はその後だ 「癒しの…力…あれほどの 死人さえも生き返しかねない…」 「…?」 物陰から見ていたコルベールに、たった今気がつく はからずも自分の考え事と同じようだった 「…あなたもいたのですか、こんな時間に… はやく寝なさい… 叱るのは明日にしますから」 ぶつくさ言いながら去っていくコルベールに背を向け タバサはむやみに歩調を強めた おぼれる者のつかむ藁を得たのだ! (あの力だったら…もしかしたら) 青銅のギーシュの巻(完)
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1804.html
「ちょっと!勝手になにやってるのよ!」 ルイズがワムウに喚き散らす。 ワムウは顔色一つ変えずに返す。 「あちらが申し込んできた決闘だろう?受けないで断れとでも言うのか?この世界にも決闘で優劣を決める風習があるとはな。 魔法使いとやらの能力もまだわかりきっていない、あの小僧で試させて貰おう。それとも、断れとでも言うのか?」 「断ってあたりまえでしょ!あんた、平民が貴族にかなう…」 ルイズは彼の戦闘能力を思い出す。 「そ、その、殺したり食ったりしちゃだめよ?」 「……」 ワムウは無言で返す。 「さあ、ヴェストリの広場とはどこだ、案内しろ。お前がしないならその辺の人間どもでも構わないがな」 周りの生徒たちはそそくさと出て行く。昼時の食堂だというのに一気に閑散とする。マルトー涙目だ。 ため息をついてルイズはヴェストリの広場へ向かい始めた。 「さあ、こっちよ。もう一度言っておくけど、私以外の人間も殺したりしちゃだめよ? 貴族を殺したりしたら、どうなるかわからないし、知らないからねッ!」 * * * ワムウが来る前のヴェストリの広場。既に野次馬が集まっている。 涙を流すモンモンラシーと胸を張るギーシュ。 「モンモンラシー、心配するな!君の愛の結晶を壊した野蛮な亜人は僕が退治してあげよう!」 「違うわよ!あんな香水いつだって作ってあげるわよ!でもね、あの亜人はね!その辺の使い魔とは段違いなのよ!」 召還したときのクラスにいたモンモンラシーが涙声で力説する。 「所詮『ゼロ』の使い魔だろ?大体、ドラゴンやエルフクラスの亜人ならともかく、魔法も使えない使い魔に『ドット』とはいえメイジの 僕が負けると思っているのかい?それは心外だな、モンモンラシー。心配しないで君は見守っててくれたまえ」 「あ、あのね!あの亜人はね!トライアングルはあるはずのコルベール先生のファイヤー・ボールを片手でかき消したのよ!」 「ははは、あの禿の昼行灯先生だ…えええええええッ!」 ギーシュの顔が青ざめる。 「そうよ!魔法を吸い取る能力とかあるかもしれないわよ!もしかすると新種のエルフかも知れないわ!ああ、恐ろしい」 「ちょ、ちょっと待ってくれよ、もう僕は決闘の約束してしまったよ?ど、どうすればいいんだあああ!」 「諦めて謝りなさい、いくらなんでも謝れば許してくれるわよ……たぶん」 「今たぶんって言ったなッ!?たぶん!?……それに、謝ることなんかできないよ!なんたって僕は青銅のギーシュ、グラモン家の男として! 決闘で背を向けることは許されない!今考えることは、あの使い魔にどうやって勝つかだ!モンモンラシー、知ってることを教えてくれ!」 「はあ、あんたには何言ってもわからないみたいね……ケガならできる限り私が手当てならしてあげるから、絶対に…死なないでよ?まずあいつはね……」 * * * ヴェストリの広場にワムウが堂々と入ってくる。 遅れてルイズ。 「よよよよよよよく来たな!にに、逃げずに来たことは、ほほほほ誉めてやろうじゃないか!で、でも今なら逃げたかったら逃げてもいいぞ!」 ビビりまくりのギーシュ。 対してワムウは初対面の野次馬たちの野次をものともせず、怯むどころかむしろ風格さえ感じさせる。 「御託はいい、お前が逃げないのならば決闘の開始だ。決闘のルールはどうする?ナイフエッジデスマッチでも古代騎馬戦でもチェーン首輪デスマッチでも構わん… と言いたい所だが、生憎、ご主人の命令で殺すなと言われているからな、デスマッチはできなさそうだ。最も貴様が望むなら、構わないがな」 ギーシュは殺すなという命令に従っていると聞いて少し顔色を戻す。 「…もっとも、『不慮の事故』は決闘にはよくあることだがな」 ギーシュの顔色が再び青くなる。 (こ、こうなったら奥の手しかない…!) ギーシュは決心を固める。 「決闘のルールはッ!グラモン家に伝わるルール!『ナイトウィッシュ(騎士の願望)』で執り行うッ!」 そのルールを聞いて青色の髪の小柄な少女が反応する。 「『ナイトウィッシュ』!?」 「知っているのタバサ?」 『ナイトウィッシュ』とは 現在から遡るころ約2世紀前にトリステイン王国周辺で最も繁栄した決闘法である。そのころのトリステインでは魔法騎士の 全盛期でありながらその魔法騎士たちの経済状況が『タルブの悲劇』により困窮している時期であった。そのため彼ら騎士の中には 剣と杖両方持っていない者が少なくなく、片方の武器しか持たないものが普通の決闘法ではどうしても不利になってしまう。そのため 剣か杖どちらかを選び、その選んだ方の武器だけを持ちそれを先に落としたほうが負けだという非常に単純明快な決闘法である。この 決闘法の流行した中期には騎士の名誉であり象徴でもある剣と杖どちらか片方を落とすということで、落下した場合騎士が生きるか死ぬか ちょうど半々の割合である高さ4.8メイルの円盤状のプレートの上で行い、負けたほうは即座にそのプレートから落ちると定められて いた。この決闘法で円盤から落ちたものは死なないまでも非常につらい苦しみを味わうことから4.8メイルの4と8の数をとって 非常に苦しいことである『四苦八苦』の語源になっている。 現在ではこの風習は廃れているが、タルブ周辺で行われている剣も杖も持たない平民の間で素手で相手を突きとすか倒すことを目指す 『アフガンコウクウスモウ』のルーツではないかという研究が進んでいる。 (出典 ガリア書房刊「中世 18人の名騎士達」より) 「よ、要するに、相手の持ってる杖か剣を叩き落すなりなんなりすればいい、ってことね」 タバサと呼ばれた少女は無言でうなずく。 タバサが説明している間にワムウへの説明も済んだようだ。 「僕は魔法使いだ!よって、僕は杖を選ばせて貰おう。君は剣で構わないかね?」 「ああ、よかろう」 (ま、まずは第一関門突破だ!モンモンラシーの言う話では彼の身体能力は異常!それならば隙の大きくなる剣を持たせれば 動きも少しは落ちるだろう。多少リーチが長くなるが、魔法使いの側のほうがもともとリーチは非常に長い! 接近されるまで僕のワルキューレで時間を稼いで、接近をされたならば『奥の手』で奴を怯ませる! あの巨体を倒せ、と言われたら無理だけれども怯ませることさえできればッ!接近している状態ならば剣を落とすくらいは可能ッ!) 「開始の合図は?」 ワムウが問い掛ける。 「あと数分で鐘が鳴る。鳴り始めたら決闘開始だ!剣を受け取れ!」 * * * (ふむ、『ナイトウィッシュ』か、片手が塞がってしまっていて神砂嵐が放てん……それに、いくらここの太陽光線が 弱いからといって、真昼間にはさすがに調子が悪い。神砂嵐は夜専用、と見てかまわんだろうな。だが、波紋戦士どころか 挙動を見る上戦闘のセンスも、経験ももっていないようだ。そんな小僧が多少魔法使ってきたところで、ハンデを背負っているとは言え 負けるとなれば今まで向かってきた誇り高き波紋戦士たちに申し訳がたたんな……これだけの人前だ、食うという能力を晒すことは この先、非常に不利なものがあるかもしれんな。まだ魔法についてはわからんことも多い、とりあえずあの程度の相手ならば 主人の約束を守ってもいいだろう…事故の責任や面倒まではみれんがな……) 「開始の合図は?」 緊張している様子のギーシュにワムウが問い掛ける。 「あと数分で鐘が鳴る。鳴り始めたら決闘開始だ!剣を受け取れ!」 虚勢を張っているのがワムウにはわかる。投げてよこされた剣を見るためにつかむ。 (どれどれ、ナマクラというところか、!?なんだ、左手の甲が光っている…体が軽いぞッ!これは、まるで太陽を浴びていないかのようだッ! 片手が塞がっているために神砂嵐は放てんが…これが『契約』とやらの影響か?条件はまだはっきりとはしていないが…ついでにこの能力も試させてもらおう) 数時間にも感じるようなピンと張り詰めた空気が続く。 そして、学校の鐘が低い音を響かせた。 「ワルキューレッ!」 ギーシュが手を広げたゴーレムをワムウの前に出現させる。 「ギーシュ、あんな短い時間でゴーレムを出せるのか!?」 「小さくて青銅とはいえ、一瞬であの位置にゴーレムを出すなんてトライアングルでも難しいぞ!」 (ふふ、驚くのも無理はない!バカ正直に決闘開始の時間なんて誰が待つか!開始前に地面の中でワルキューレを錬金しておいたんだ! 地表のゴーレムを一瞬で出現させるくらいならわけはないッ!) 「ギーシュってかっけーなー でもゴーレムがいちげきで吹っ飛んで いったいどうなるんだろう ギーシュはおれのダチ」 ワムウが剣を持っていない左手でワルキューレを吹き飛ばした。腹の位置には無残にも穴があいていた。 「なにいいいいいィイイイッ!」 一撃で粉砕されたギーシュが驚きの声をあげる。 「ふむ、中身が詰まっていれば少々手ごたえがあるかと思ったが、外だけのブリキ人形か。人形ならアジアで出会った『オートマータ』の方が まだ手ごたえがあったぞッ!」 ワムウの近くに青銅の粉が舞う。 (なんだあの化け物はァアアアアッ!一体目で数十秒稼ぐつもりがァアアアッ!ワルキューレの余裕はなさそうだ…… しょうがない、作戦変更だ、多少心もとないが2体目は『アレ』でいくッ!) 「もう一回だ!ワルキューレッ!」 「バカの一つ覚えか?もう一度破壊してやるぞッ!」 ワムウが左手を振ろうとする、しかしその瞬間! ワルキューレの肩が輝く! 「モンモンラシーの話からお前が脱出よりまずコルベール先生を倒そうとしたことはわかっている!あれだけの戦闘センスなら囲まれた 状態よりまずは広い場所に出てから戦おうとするのは当然の考え!なぜそれをしなかったか!それは外に出てからでは倒す自信がなかったからだ! 『太陽の光』に弱い!この仮説は正しかったようだなッ!」 肩が反射した光をもろに浴び波長の弱い光といえワムウは怯んだ。 「MMWWWWWWWW!!!」 「剣ごと右肩もらったァーーッ!」 動きは鈍重とはいえここまで接近した状態でのパンチをかわせるわけがない。そんな常識にギーシュはとらわれていた。 しかし、『戦闘の天才』ワムウは伊達ではなかった。 2体目のゴーレムの破片がワムウの周りに降りかかった。 ゴーレムが振りかぶった瞬間、その拳が影になったのだ。 「どうした?もう終わりか?」 2体目を顔色も変えずに破壊したワムウがゆっくりと歩いてくる。 「もうやめてッ!」 観戦していたモンモンラシーが涙声でギーシュに向かって叫ぶ。 「ギーシュ、少なくとも今のあなたじゃかなわないわ!おとなしく降参しなさい!死んだらどうにもならないのよ! 決闘である以上、負けを認めればケガをさせることは認められないわ!」 ギーシュが振り向いて静かに話す。 「モンモンラシー、心配してくれることはうれしいけれど、それはできないね。 自分から申し込んだ決闘で命の危険を冒す前から降参するなんて、グラモン家として、いや男としてできないねッ! ましてや好きな女の子の前ではッ!」 叫ぶが早いか、走るのが早いか。 ギーシュはワムウに向かって突っ込んでいく。 ギーシュに向かって歩くのやめたワムウの眼前に立つ。 「正真正銘…最後のワルキューレ達だ!もう小細工はしない!」 ゴーレムが4体出現する。 「4方向からだッ!これはかわせないだろう!」 一瞬であった。ゴーレムが粉みじんになるのは。 後ろのゴーレム2体を回し蹴りで、その回転をそのまま利用して左フックで前方のゴーレム2体も破壊。 ギーシュの精神力を込めた人形は、青銅のかけらへと変わりワムウの周りに散った。 「これで最後だといったな、命令を受けている以上殺すのも気が進まんし今のお前にはそこの女がいったように殺す価値もない。 今杖を置けば降伏を認めてやる。もっとも、これだけの戦力差を見せられて臆さなかったお前には少々興味があるが、 しょせんまだ坊主だ。大人しく負けを認めろ。これ以上続けるようならば、容赦はせんぞ」 ギーシュが顔色を変える。 「ほ、ほんとうに許してくれるのか?」 一瞬で虎の子のワルキューレをやられたからか、決闘前のおびえた表情に戻っている。 「ああ、とりあえず今はな」 しかし、ギーシュ顔色を戻した。 「だが断る。最後といったのはワルキューレだッ!まだ僕の精神力はつきていないぞッ!この距離が、すごくいいッ!『錬金』!」 ワムウを中心に爆発する。 ギーシュが錬金したのはゴーレムの残骸であった。 ゴーレムの残骸をバラバラにし、粉にすることによって『粉塵爆発』を起こしたのだ! 青銅はもともと融点が低く、加工しやすいために『青銅器時代』さえおこしたこともある金属。 晴れ晴れとしていたヴェストリの広場であれだけの青銅の粉が舞えば粉塵爆発は当然の結果ッ! わざわざ壊されるかのようにワムウのごく近くにワルキューレを出現させていたのはこれが狙いだったのだ! (モンモンラシーから聞いている!コルベール先生のファイヤーボールは簡単にかき消された以上、僕のワルキューレに多少小細工を 弄したところで適う訳がない!しかし、なぜかゼロのルイズの爆発魔法を食らった途端、彼は怯んだというのだ! つまり、彼は『爆発』に弱い!間違いない!怯んでいる隙に剣を…) 着眼点はよかった。この距離ならば爆発に多少巻き込まれることも覚悟していた。彼ほど格上に善戦できるドットメイジは この学院にはいないだろう。 しかし、その仮説は残念ながら間違っていた。 「むぐぁ!」 剣を奪い取ろうとしたギーシュの腹にパンチが入り、数メイル吹っ飛ぶ。 立ち上がろうした時には既にワムウは近づいており、首根っこをつかまれ、持ち上げられる。 怯んでいた様子はない。体を見ると多少ほこりでよごれているものの、火傷どころかかすり傷すら負っていない。 ギーシュは観念したかのように目をつぶり、杖を手から離した。 (さよなら、父さん、母さん、友人たち、そしてモンモンラシー。降伏を断った以上、彼は僕を許さないだろうし…許すべきではない…) 低い音とともに地面に叩きつけられる。 ギーシュの体は地面に横たわった。 「ハッ!?いき、いぎでる?」 ワムウはすでに出口方向へ歩き出していた。 「亜人…じゃなかった…ワムウ、なぜ僕を殺さなかった?情けか?命令に従ったのか?」 ワムウは振り向かずに語った。 「貴様のちっぽけな根性…そのタフさがある戦士に似ていたものでな……奴とやったときと違いケガなどは負わなかった…しかしその ちっぽけな根性に免じて1度目は見逃してやる…だが、期限までに奴に並ぶほどの戦士になることを期待してやろう……」 「し、しかし、僕はどう考えても正々堂々と戦ったとは言えないぞ!自分に都合のいいようなルールを選び、君の弱点を狙った。 現に、君はその剣を使わなかったじゃないか!こんなアンフェアな戦いで完敗したんだぞ、僕は!」 「俺の…好敵手…俺を倒した奴もそんな奴だった…正々堂々、真っ向から攻めるなど考えもしないだろうな、奴なら。 弱点を狙って当然、狙わない奴がマヌケなのさといったしたり顔でレース開始前に車輪の下に瓦礫を置いて妨害するような奴だ。 だが、奴は誇り高き戦士であった。戦いを汚さない、それはお前も同じだ。決して人間のようにセンチになったのではない… だが、まだこちらの世界を知らん。好敵手の候補が増えるのは俺としても本望だ」 振り向いていた首を戻し、再度歩き出す。 「もう一つだけ、聞かせてくれ。……『期限』はいつだい?」 ワムウは振り向かずに言った。 「指輪がないからな、お前が死ぬか、俺が死ぬまでで構わん」 ワムウは、歩き去っていった。 ――ギーシュ、完全敗北。この後気を失った。複雑骨折により全治数週間の模様。再起可能 ――ワムウ、無傷。 あーん!ギーシュ様が負けた! ギーシュさまよいしょ本&ギーシュさまF.Cつくろー!って思ってたのに… くすん…美形はかませ犬だ… ・゚・(ノД`)・゚・うっうっう…ひどいよお…ふえーん!! この間「今、時代はギーシュだ!」の葉書を出してまだ2週間じゃないですか! どーして、どーして!?あれで終わり!?嘘でしょ!? 信じられないよおっあんなワムウごときに負けるなんてっ!! ジョジョと差がありすぎるわっ!!戦士になりますよね?ね?ね? ……泣いてやるぅ・゚・(ノД`)・゚・ 私はあのおそろしく鈍い彼が(たとえド女好きでもさ!ヘン!)大好きだったんですよっ!! ギーシュさまあっ!死んじゃ嫌だああああああっ!! 先生のカバッ!!え~ん・゚・(ノД`)・゚・
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/183.html
ゴーレムの腕が迫ってきた、わたしに出来る事といえば目を閉じる事位だ わたしの体が宙に飛ぶ・・・痛くない? 「フライか?」 フーケの叫び声が聞こえる、タバサがフライを唱えてくれたんだろうか? わたしが目を開けると、そこにはグレイトフル・デッドがわたしを抱いていた 「きゃああああああああああ!降ろして、降ろしてお願い」 「大人しくしてろ、落っこちるだろうが」 すぐ傍にはプロシュートが立っていた 「とりあえず、お礼は言っとく、ありがと。だから、早く降ろして」 「お前、やはりスタンドが見えていたのか」 グレイトフル・デッドがわたしをやさしく降ろした 「まあ、話が早くて助かるがな」 わたしが見える事に関しては、どうでもいいようだ 「向うに隠れてろ、ご主人様を守るのは使い魔の仕事だろ」 またアレに抱えられては堪らないので、わたしはキュルケとタバサの側に行く 「ミス・ロングビルは?」 彼女の姿が見えないので二人に聞いてみる 「あんたと一緒じゃなかったの?」 キュルケが質問に質問で返してきた・・・言いたい事はわかったけど 「それよりもダーリンが!」 キュルケがプロシュートを見つめていた 「図体がデカイ分、動きがノロイな!」 ゴーレムの左腕による攻撃をプロシュートは巧みにかわしていた 「この使い魔が、ちょこまかと、ゴーレム!」 今までで、一番早い攻撃。ゴーレムの拳が地面にめり込んだ 寸でのところでプロシュートは拳をかわしていた グレイトフル・デッドがゴーレムの腕を押さえつける 「これは中庭で見せた力!力比べかい?だけど、私のゴーレム相手には力不足のようだね」 フーケにもアレは見えていない、しかしフーケほどの使い手ともなると ゴーレムの状態は手に取るように分かるのだろう 「力不足・・・そんなことはわっかていたさ、だが力が無い分『射程距離』が 長いんだぜ、俺の言っている事が解るか?ええ、おい」 プロシュートがゴーレムから距離をとり、グレイトフル・デッドが ゴーレムの腕をよじ登っていく 「こ、これはっ!何かが腕を伝ってくる?ゴーレム振り落とせ!」 フーケの命令によりゴーレムが腕を振り回す、だけどグレイトフル・デッドの 大きな手は、がっちりとゴーレムの腕を掴んで離さなかった わたしはアレが見えないまま近づいて来るのと、見えて近づいて来るのが、 どちらが怖いのかを考えた。しかし考えてても無駄なので、 わたしは考えることをやめた 「掴んだ!」 グレイトフル・デッドがフーケを掴んだ 「ひいい」 フーケが情けない悲鳴を上げる 「安心しな、命だけは保障してやる!生け捕りだからな、運がいいなオメー」 「グレイトフル・デッド」 ズギュン!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1112.html
小屋の外から叫び声がする。ルイズたちの声だ。 小屋の窓越しに全長30メイルにも達しようとするゴーレムの姿が見えた。 「何だとッ?!」 「僕はミス・ロングビルが『杖を振る』のを確認してないぞ?」 「フーケはロングビルじゃなかったのか?」 「と、とにかく『破壊の杖』はこれです! 早く脱出しましょう!」 ミス・ロングビルはそういいながら『M72ロケットランチャー』を手に取り、外に出て行ってしまった。 「あ、ああ!」 「そうしよう!」 出て来たとたん、土のゴーレムは三人を執拗に攻撃しだす。 「ロハン!皆を連れて学院に逃げろ! こいつは俺が足止めする!」 「分かった!行くぞ!ロングビル! この状況じゃどこにフーケがいるか分からん!」 「は、はい!」 (さっき『薪に似せた杖』を投げるフリをして振った… まだ、『私がフーケである事実』はまだバレてないようね… それに『露伴』と『ブチャラティ』を引き離した! 危なかったけど計画通り!) 露伴はロングビルと共にタバサ達と合流した。 「あれすごく強いわロハン! 私の炎も、タバサの竜巻も効かないわ!」 「退却」 「ああ、そうしよう。『破壊の杖』はロングビルがGetした」 「ルイズは?」 「あ、あれ?…」 「!あそこ」 ルイズはブチャラティのすぐ後ろにいた。 つまり、ゴーレムのすぐそばである。 巨大なゴーレムの顔に小さな土煙が上がる。 どうやらルイズの魔法のようだ。 「ブチャラティ!!ルイズを頼む!」 「アリアリアリアリアリアリアリ!!!!!!」 「拙いな…!俺の『スタンド』との相性は最悪だ…」 ブチャラティはそうつぶやいた。 先程から、ゴーレムの両足を 『スティッキィ・フィンガーズ』全力で細切れにしているが、土でできた『ゴーレム』は『切断』していく端から再生していく… 「『足止め』する分にはいいんだが…」 ふと、目の端に仲間の姿が映る。 「何ッ!」 ロハンとミス・ロングビルは無事にキュルケたちに合流できたようだ。 問題は、ルイズだ。こちらに走ってくる! 杖を振りかざしながらもこちらに走ってくるのをやめないッ! 「こいつと戦うつもりなのかッ!」 間一髪。 ブチャラティはルイズとゴーレムの間にわが身を入れることができた。 「お前もロハンたちと逃げろ!」 「いやよ!こいつを倒せば、誰も私のことを『ゼロのルイズ』と呼ばないでしょ!」 「何を言っている!いまはそんな場合じゃない!」 スティッキィ・フィンガーズでゴーレムの攻撃を解体しながらしゃべったため、ブチャラティに、少しずつ、だが確実に飛石のダメージがたまっていく… 「だって、ヒック。悔しくて…私…」 「くッ…マズイ… ここはルイズだけでも逃がさなくては…」 「ブチャラティ!!ルイズを頼む!」 「こいつを受け取れ!」 露伴が何かを投げた。 「飛んで飛んで飛んで飛んで…♪」 「回って回って…♪」 「落ち~るぅぅ~~♪」 そのまま露伴が叫ぶ。 「君のそのルーンは武器を持ち、主人を守る意思を持ったときに、又は、心を振るわせたときにその真価を発揮する!」 「おそらく『スタンド』もパワーアップするはずだ!」 今度こそ露伴達は走り去ってゆく。 ブチャラティは『デルフリンガー』を拾った。 右手で握ると、『ローマで体験した精神入れ替わり直後の感覚』にいた感覚だ。 (あの時は、『スタンド』の能力がパワーアップしていた…) (こらならいけるッ!!) 後ろに隠れているルイズに左手を差し出す。 「分かった。俺一人では正攻法でこいつを倒すのは困難だ。 ルイズ。力を貸してくれ。『二人で』あのゴーレムを倒そう」 「…分かったわ!」 ルイズは、差し出されたブチャラティの手を握る。 ブチャラティのルーンが光り輝いていく… そして二人が叫ぶ。 『『スティッキィ・フィンガーズ!!』』 『『アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!!』』 あれほど修復を繰り返していたゴーレムがあっという間に崩れていく… ルイズは実感していた。 (私一人では『ゼロ』だけど、「使い魔」いえ、『仲間』と一緒なら何でもできる!) (今ならそんな気がするわ!) バ―――――z______ン! 『『アりーヴェ・デルチ!!』』 あと、十歩。 そこに行けば、乗ってきた荷車に到達できる。 学院に「救援」を要請できる… 「そこに止まりなさいロハン!それにミス・ツェルプストー!」 声の先には、タバサの喉元に杖を突きつけたミス・ロングビルがいた。 不意に当身でも食らわせられたのか、タバサは気を失っているようだ。 あと、五歩。 だが、立ち止まらざるを得ない。 「まずミス・ツェルプストー。あなたは杖を捨ててもらいます」 「…あなたが『土くれのフーケ』だったのね…」 キュルケは杖を草むらに放り投げた。 「そしてロハン。あなたはこの『破壊の杖』の使用方法を教えなさい。 あなた、『宝物庫』でこの使い方を知っているような話し方をしていたでしょ?」 「僕が話すと思っているのかい?」 「ええ、『この子の命』と引き換えならね…」 「……分かった。『諦めた』。話そう」 「ロハン!…」 「いいか、よく聞け。 まず、リアカバーを引き出して、インナーチューブをスライドさせる。 照尺を立てた後、照準を合わせてトリガーを引くんだ。 最大射程距離は1000メートル。10メートル以内は信管が作動しないからな。 ついでに言っておくが、後方45度、25mにはバックブラストが行くから注意が必要だ。どうだ、簡単だろ?」 「?」 「?何言ってるの?」 ミス・ロングビル、もとい、『土くれのフーケ』は戸惑っているようだ。 「この子の命が惜しくないの?私に分かるように説明しなさい!」 「分かった。まず、そこの、そう。それがリアカバーだ。 それを引き出して…」 露伴が指で指し示しながらフーケに近づいた。 「待って!それ以上近づくんじゃあねーわよ!」 フーケの杖を持つ手に力がこもる。 「分かった。もう近づかない。 すでに一歩『射程内』にはいったからな…」 「?」 『ヘブンズ・ドアー』! 『タバサ達を攻撃することはできない』! 「う、動けない!」 突然、フーケが身動き一つできなくなる。 「もう大丈夫だ。キュルケ。こいつを縄でぐるぐる巻きにしてやれ」 気絶したタバサをお姫様抱っこしながら、露伴が言う。すでに勝利したような表情だ。 「は、はい!」 キュルケはフーケの杖を取り上げ、用意していたロープで縛り上げた。 「何したのよ!答えなさい!」 「僕が『諦めた』といったのは『ブチャラティに僕の能力を隠し通す事』だ」 「あの男、ゴーレムと戦っている最中にも周囲に気を配っている… 本当に戦闘経験豊富なやつだな…」